出来事 父から受け継いだもの
だいぶ前のことではあるが、すでにリタイアしている父にこんな質問をした事があった。「働いているとき、夢とかなかったの?」父は目も合わせずこう言った。「知らん」野暮な質問だった。父はこういった類の質問には答えない人間だ。昔からそうだった人が興味を持っても自分が興味をもたなければ答えようともしない。他人に興味が無いのだろうか?こっちも話す気がなくなる。こんな人間にはなりたくないとずっと思っていた。周囲の友人からも、『君の父さんはもっと話好きのイメージだったよ』とよく言われた。それくらい第三者から見ても無口で、無愛想、何を考えているのか理解できない人だ。自分が父と似ている部分があると、父が自分の父であることを恨めしく思った時期もあった。もっと話しやすい父なら良かったのに。もっと遊んでくれる父なら良かったのに。もっと優しい父なら良かったのに。多感な時期はよく思ったものだ。しかし、大人になった今ではそんな父でも認めるところがある。それは、家族の為に真面目に仕事をしてきてくれたということだ。私も今、家庭を持っている。守らなければならないものである。その中で理由はどうあれ、働かなければならない義務があ...