2016-10

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芸術の秋に学ぶ こだわりと凡事徹底

先日勧められて朝倉文夫氏の彫刻作品を見に日暮里にある朝倉彫塑館に行った。朝倉彫塑館は朝倉文夫氏のアトリエと住居だった建物で、東京美術学校を卒業した1907年、24歳の時に谷中の地にアトリエ兼住居を構えた。当初は小さなものを、自ら設計し、改築を繰り返し、細部に至るまで様々な工夫を凝らしており、こだわりを感じさせる建築だった。「朝倉彫塑塾」と命名し、教場として広く門戸を開放して弟子を育成したとのことだ。朝倉氏(1883年 - 1964年)は明治から昭和の彫刻家であり、「東洋のロダン」と呼ばれた。朝倉氏は東京美術学校(現・東京芸術大学)に入学、モデルを雇う金がないために上野動物園へ通って動物のスケッチをした。縁あって貿易商の注文をうけ、動物の像を卒業までに1200体以上に作った。気付けばスキルが向上していて、文展に出展し、自己最高賞である2等となり、その後も連続上位入賞を果たし、第10回文展においては34歳の若さで最年少審査員に抜擢され、1958年には日展の顧問に就任した。非常に多作であり、全国各地に数多くの像を残した。朝倉氏は動物、中でも身近に多くいた猫をこよなく愛し、多いときには自宅に1...
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言葉の持つ価値

ノーベル文学賞をボブ・ディランが受賞した。文学者でない彼がノーベル文学賞というのは確かに違和感があるが、ポピュラーミュージックを歌詞の持つ世界観によって高い地位にまで引き上げた功績が認められた、という事らしい。楽曲については詳しくないが、言葉(強いメッセージ)には人を動かす力が宿っている、という事を再認識させてくれた出来事だった。ボブ・ディラン本人は、「歌詞は音楽以上に大事。歌詞がなければ音楽は存在し得ない」と若い頃から公言していたようだ。反戦や人種差別などへのアプローチに代表されるように、人間が持つ愚かさや危うさをテーマにした作品はとりわけメッセージ性に優れている事が良くわかる。音楽と文学どちらが高尚なのかというのはさておき、どちらも人間が作り出し、とりわけメッセージ性に優れたものは、時代を超えて、また新しい世代に受け継がれていく事が共通しており、そこからまた、新たなカルチャーや強い結びつきを形成していく。昔の人も現代人も、この辺りは大きく変わらない部分だ。人は、常に他者との関係性の中で生活しており、何かを伝えたり、伝えられたりする事で様々な決断をしている。そのつながりの中で、より良...
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永続的企業価値

かなり前に往訪させて頂いた老舗企業があった。当時、業界では隠れた優良企業などと言われ、良い技術も持っていたし、商品も定番商品だったので、営業も、売りやすいのだろうなと思ったものだ。その時話した方も、『うちの会社は、人は辞めないのですよ』とおっしゃったので、『どんなところに魅力が隠されているのですか』と私。すると『今のところ安定しているからじゃないですかね~』と・・・。私も当時は若かったのもあり、商品がよく売れて、それなりの給与も貰えるなら最高だよな~などと羨ましく思ったのを覚えている。当日、応接に通される際に、執務室を横切ったのだが、中高年の方が多かった印象のあった私は、今のうちに人材獲得に動いた方がいいのではと、ご提案させていただいた。しかし、「今は順調だから必要ない」という事と、過去に中途採用をしていないので社内の同意を得るのが困難だから面倒という話だった。順調ならそれでよいと、私も特にそれ以上はご提案しなかった。先週、その企業の近くまで行ったので、ちょっと寄ってみようと足を運んでみた。当時の担当者も変わらずにいらしたので、お話を伺うことにした。結果、売り上げは当時の半分くらいに落...
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失われた信用を求めて・・・

T社の売上高の水増し等の不正事件が明らかになったのは昨年のことだった。監査法人が不正の兆候を知っていながらも見逃していた。リスクの高い監査は職業的懐疑心を持って慎重に行う必要があるが、人手不足や担当企業との馴れ合い、担当ディレクターの監査報酬という売上を失いたくないという気持ちから、不正の「ニオイ」があっても、なかったことにしていたのだろうと思う。どうして監査法人がこのような質の低い監査を提供してしまうのか?あるレポートでは、監査法人の「ギルド的体質」が不正を防止できない法人内の企業風土を醸成してしまっているという。ギルドとは、中世ヨーロッパの都市で発達した商工業者の独占的、排他的な同業者組合である。生活のさまざまな面で相互に助け合うために結成した身分的な職業団体で同業者の利益を守ることを目的としていた。監査法人の組織制度は、自分の利益だけ考えて、所属する組織やその先の顧客の利益を守ることができなかったのである。これでは、企業がグローバル化し、様々な予期せぬリスクを負う昨今の高リスクの監査には対応できないことだろう。T社はもちろん、E監査法人の今後の組織の変容を見てみたい。T社に限らず...