未分類 挫折
将棋のフィクションを手掛けた作家が、「将棋のフィクションは二種類に分かれる。羽生善治氏をモデルとする人物が登場する作品とそうでない作品だ。」という趣旨のことを語ったことがある。平成時代における将棋の特徴の一つを言い当てていると思う。フィクションならではの特徴として、現実離れした登場人物の強さを描けるという点があるが、7冠達成などの実績を持つ羽生氏の影響力には圧倒的なものがあり、主人公が目標にするような「棋界の頂点」にいる人物を描こうとすると、どうしても羽生氏を意識せざるを得ない。一方で、そもそも羽生氏が現実離れした強さを誇っているので、中途半端な強さの人物を描くと、インパクトに欠けるという状況になっている。藤井聡太氏の出現により、この傾向には拍車がかかっていると言ってよいだろう。そんな状況の中、羽生的な人物が登場する従来型のプロの世界を描く作品ではなく、「年齢制限のあるプロ養成機関を退会した人物が、アマチュアからプロ入りを再度目指す」という作品が増えている。ドラマなら、玉木宏主演で最近まで放映されていたNHK「盤上のアルファ」、漫画なら「リボーンの棋士」。アマチュアからのプロ入りは極め...