だいぶ前のことではあるが、
すでにリタイアしている父にこんな質問をした事があった。
「働いているとき、夢とかなかったの?」
父は目も合わせずこう言った。
「知らん」
野暮な質問だった。
父はこういった類の質問には答えない人間だ。
昔からそうだった人が興味を持っても自分が興味をもたなければ答えようともしない。
他人に興味が無いのだろうか?こっちも話す気がなくなる。
こんな人間にはなりたくないとずっと思っていた。
周囲の友人からも、『君の父さんはもっと話好きのイメージだったよ』とよく言われた。
それくらい第三者から見ても無口で、無愛想、何を考えているのか理解できない人だ。
自分が父と似ている部分があると、父が自分の父であることを恨めしく思った時期もあった。
もっと話しやすい父なら良かったのに。
もっと遊んでくれる父なら良かったのに。
もっと優しい父なら良かったのに。
多感な時期はよく思ったものだ。
しかし、大人になった今では
そんな父でも認めるところがある。
それは、
家族の為に真面目に仕事をしてきてくれた
ということだ。
私も今、家庭を持っている。
守らなければならないものである。
その中で理由はどうあれ、働かなければならない義務がある。
父はその義務を不器用な人間なりに家族の為に果たしてくれた。
身を粉にして働いてくれた。
何よりも感謝すべきことである。
社会人になった今では、そんな父に感謝している。
やはり、父の子。ただ真面目に働けるだけなのかもしれない。
不器用で、口下手で表現も稚拙な自分がいる。
無いなら無いなりに得ていくしかない、むしろ無い方が成長し甲斐がある。
父に無かったものを自分が得たらどんな人間になれるのだろう。
今それを仕事を通じて得ている最中だ。これから未だ見ぬ自分に成長し、
父に無かったものを得て、父を越え、今学んでいるものを社会に発信していく。
出来れば、モノづくりで世の中に貢献してきた父とは異なるが、
キャリアの提案を通じて、社会に貢献できる人間なりたい。
その為に父から受け継いだものも大事に活かしながら・・・
この会社で多くのことを学び、それを後世に伝えられるような人間に成長して行きたい。

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