何の為に

灰色の空とジメジメとした蒸し暑さに、例年より遅い梅雨の到来を感じるここ数日。
天気のせいか、どこか沈んだ空気のいつもの最寄り駅。
赤いメガホンをもちながら道行く人に声をかけている人々が目につく。
都知事選に向けた最後の追い込みだろう。
軽く会釈をし、駅の構内へと進み電車に乗る。

ご存知の通り、今年の都知事選の候補者は過去最多の56名を数え
今までで最も多い22名(2020年)から比べても、その特異さが伺える。
ニュースでも取り上げられていることだが、候補者の中には売名行為とも取れる宣伝をし
SNSや動画サイトを駆使して話題作りに奔走しているようにも見える。
ある意味では立候補した時点で自分たちなりの目標は達成しているのかもしれない。

本来、選挙に出馬する目的は当選することなのだと思うのだが
明らかに都政のトップとなることを目的とするように見える候補者は少ない。

多様性や自分らしさなどが重要視される現代においては、このような現状を
選挙を通した自己表現の機会と取ることもできるのかもしれない。
しかし、それによって本来の選挙の目的が達成されなければ本末転倒である。

同じように、日々の仕事、生活の中においても、いつの間にか本来のあるべき姿から遠ざかっていたり
当初あったはずの目的を捻じ曲げ、自分の都合のいいように解釈したりしてしまうこともあるのではないか。

一度立ち止まり、本来の目的に立ち返ることで得ることも多いのではないか、というようなことを考えながら
職場のある駅の構内を出て、空を見上げると雲の合間から太陽が、夏はまだかと顔を覗かせていた。

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