コスパはいいことなのか?

コスパやタイパという言葉をよく耳にするようになった。
少し前までは若年層特有の概念とされていたが、
最近は、全世代共通の価値基準のひとつとして受け入れられている。

しかし、このコスパという考え方は、一方で複雑な面を持ち合わせていると感じる。
一見すると、少ない労力で一定の成果を求めるというのは合理的で理想的なアプローチだ。
実際、効率が良いに越した事はない。しかし、軽薄に映る一面も垣間見えることがある。

例えば、就業後に上司や先輩から飲みに誘われたケースだ。
その価値をコスパで判断する若手社員が実際に少なくない。
数時間と数千円の出費で参加する事に価値があるのか?と考えるようだ。
合理的なのかもしれない。
ただし、社内での対人関係、仕事のノウハウやアドバイス等、
金銭や時間に置き換えられない価値を見過ごすことにもなり兼ねない。
それは、効果が出るまでに時間を要するものが多いからだ。

経営学では、効率(efficiency)と効果(effectiveness)という二つの指標で成果を測定する。
効率はコスト削減やプロセスの最適化と連動する。
特に日本の製造業などではこの観点が重要視されてきた。
一方で、効果は実際にどれだけの成果を達成できたのかという事になる。

ここでコスパの問題が出てくる。
ある企業がキャンペーンを実施したとする。
初回にある程度の成果があったものの、コストが高いため次の実施を躊躇する。
「コストがかかりすぎる」というコスパの観点だけでキャンペーンを継続しなかった場合、
場合によっては、大きな市場のチャンスを逃しているかもしれない。
効果を重視した場合、「わずかな顧客増加でも、それが将来大きなリターンにつながるかもしれない」という見方もできるからだ。

このように、コスパを重視すること自体は当然のことだが、
コスパだけに偏った考え方は避けたいところだ。
時には非効率的に見える取り組みが、最終的には計り知れない価値を生むこともある。

飲み会でも、多くの社員の前では聞けないような話が聞けたり、
普段は厳格な上司の若い頃の失敗談等を聞けて、上司に対する考え方が変わるかもしれない。
また、そのことが新たな気づきにつながるかもしれない。

個々のコスパやタイパ等の価値基準は大事にしてもらいたいが、
もしも何かが大きく変わるきっかけになるとしたら・・・
そこに掛かるコストや時間は安いものだと考える事も出来るのでないか。
時間もお金も有限なので、大事ではあるが、それと同じ位人間関係や
自己成長への投資も大事なのではないか。

そのためには、コストと効果、両方のバランスをある程度の時間軸で感じる事が重要だ。
解った時には遅かったりもする。
時間が過ぎて、そこにあるのはスマホ画面の中の人にならないように。
人とのつながりは大事にしていきたい。

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