人は何かを達成したいと思う時、
いかに最短で効率的に、加えて楽にできる方法は何かを考える。
ダイエット、筋トレを例に挙げると「飲むだけで、1ヶ月でモテボディ」、
ビジネスに於いても「この1冊で完結!王道のロジカルシンキングが分かる本」など、
人間の欲求に上手く訴求する謳い文句のサービス・商品を頻繁に目にする。
それ自体が悪いものではなく、しっかり取り組んで行動すれば効果を見込めるだろう。
しかし、忘れてはいけないのは、人間は自分に甘い生き物で、
放っておくと、つい楽な道を選んでしまうということ。
そして、「◯◯だけで完結」のような最短で答えを求める思考に囚われすぎると、
無意識的にそれ以外の情報を排除してしまうリスクがある。
冒頭の考え方を例にとれば、最短でスキルアップしようと考え、
1冊に必要な情報がコンパクトに凝縮されている本を読み、
書いてあることを実践すれば、基本の型を身に付けることはできるかも知れない。
しかし、ビジネスの現場で使うことを考えると、思考スキルの以前に、
クライアントの基本情報や特徴、加えて、
周辺情報(クライアントを取り巻く市場全体のこと、競合の動向等)のリサーチを欠いた途端、
思考の型を学んでも何も活かせなくなる。
これは一例に過ぎないが、ビジネス以外でも、同様の事例はある。
現在、ドイツリーグで活躍していているサッカー選手で、原口元気選手の例を紹介する。
2018年ロシアワールドカップでは、ベスト16入りに貢献した方だが、
地味なことを積み重ねることで、常に結果が求められる欧州リーグで生き残っている良いモデルと言える。
海外移籍前の20代前半の頃は、テクニックが売りという印象だった。
しかし、海外で結果を出す為に、テクニックに磨きをかけるより、
サッカーの基本となる「走力」に比重を置き、自身のスプリントフォームを見直し、
その為に、元陸上選手で現在は筑波大学のスポーツ科学領域の准教授である
谷川聡氏の元で、2014年から地道なトレーニングを積み重ねた。
一見すると、回り道で、効果が現れるまで時間を要することだ。
しかし、この積み重ねにより、試合中、相手に走り負けないスプリント力を手にして、
疲れが出る後半、大半の選手のスピードが落ちる中、原口選手は変わらない。
実際、ワールドカップの時は、スプリント力をフルに活かし、相手の攻撃の芽をことごとく潰していた。
私もサッカー経験者だが、小学生の時にテクニックに秀でていて、
体が出来上がる時期に走り込みやフィジカルトレーニングを
怠った選手の多くは、そこそこ止まりになっている。
反対に、プレースタイルは地味でも、走り込みなど、
皆が嫌がるトレーニングを積み重ねた選手程、晴れ舞台で活躍しているのである。
お客様の課題を解決したいと考えた時、
一発で課題を引き出せるような魔法の質問や、
思考テクニックが存在するのではなく、全ては、如何に日頃から、
必要な情報にアンテナを張り、インプットを繰り返す習慣ができているかである。
加えて、一見すると業務に直結しないような事こそ、
興味を持って触れてみると、思わぬところで引き出しが増える。
多忙な日々が続くと、目先の優先事項に忙殺されがちになるが、
そういう時こそ一旦深呼吸して、
基礎行動に抜かりが無いかを冷静に振り返り、地に足を付けたいところである。

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