万年筆

父からもらった万年筆、どうも書きっぷりが悪い。そこで伊東屋へ万年筆を探しに行ってみた。
さて、どう選ぶか。デザイン、質感、レア物・・いろいろな基準がある。
ぱっと見て、親指の付け根のところに重心があるものが気に入った。万年筆の重みを感じながら、
ペン先はさらさら滑るようになっている。この重みも、万年筆と寄り添っているようでたまらない。
そうか、重みの位置が合うもので選んでみよう。
そして、同じメーカーの別のデザインのものを手にとってみた。
しかし、こちらは自分の手にそぐわず、重心の位置がより後方にきて、
万年筆に操られているような感覚に陥った。 うん、手の大きさに合うものを探そう。
店員さんに、別のメーカーで自分の手のサイズに合うものを何点か出してもらう。これは、ぴたっとくる。
さて、問題の書きっぷりはどうか。滑るように、英語で自分の名前を書いてみる。素晴らしい書き心地である。
滞ることなく、紙面に流線を残してゆく。
ほぼその万年筆に決めかけていた時、ふと、「美しい日本の風景」という文句が目に入り、
自分もきれいに文字を書いてみようと、筆を滑らせた。・・あれ??何か、おかしい。固い。
漢字がうまく書けないのだ。
「美」という文字の点やはらいがうまくいかない。如意とはいかず、悩んでしまった。
あれほどきれいに英語は書けたのに、日本語の美しさを表現するには充分ではない。
感情を込めることができない。そういえば、あるドイツ製の万年筆は書きっぷりは悪くなかった。
あれは、ドイツ語特有の「点」(a,e,o等の上についている点)に対応しているからなのであろう。
やはり外国製の万年筆、基本的にはアルファベットを流れるように書くようにできている。
その文字の特徴に合うよう、時間をかけて進化してきたのだ。
 そういうわけで、残念ながら、これという万年筆を見つけられずに帰宅してしまった。
日本語をきれいに書くための万年筆は存在するのか?
そもそも外国起源の万年筆でその進化を遂げたものはあるのだろうか?まだその答えは見つかっていないが、
いつの日か、美しい日本語を手に馴染んだ万年筆で書ける日が来ればいい。
日本人のための、日本語のための、必然の機能を基準としたもの。

そして、どの職業でも、そのプロフェッションにぴたっと合う人格や経験があるのだと思いを馳せた。
そしてまた逆に、一個の人間の生い立ちや経験・能力からくる「歴史的な個性」を生かす職業がきっとある。
一生かかっても天職に辿り着ければ幸せだと思う。

コメント

  1. 医薬品人事 より:

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    転職を通じて天職にたどりつく、とでも申しましょうか。
    日本語を書くくだりについては、和魂洋才というか、難しいですよね。
    奇遇にも、小職も万年筆にはこだわっております。
    今度ご来社の際、ゆっくり、話しましょう。