中古車販売会社の保険金不正請求が明るみになっている。
記者会見も含めて、色々と突っ込みどころがある企業と感じたが
仮に「経営体制が180度変わりました、膿を出し切りました!」と言われても
この会社で車を買うのは、超逆張り発想の人か相当な猛者に限られるだろう。
短期の数字にこだわり、信頼を裏切った代償はあまりに大きい。
日常において信頼関係をベースに成立している事はとても多い。
例えば、毎日保育園に子供を預けるのだってそうだし、
顔の見える野菜の方が美味しそうに感じるのも同じ様な理由だろう。
職場を例に出せば、リモート勤務の是非が問われたり、
心理的安全性がことさらクローズアップされたりするのは、
業務スキル以外の「人としての信頼」の存在感が大きいからだろう。
組織に属している以上、仕事の実行は人間関係に紐づく事となり、
ただ期日通りに終わればよい、ミスが無ければOKという単純な話ではなく、
「誰とやるか?」という部分で仕事や会社の価値を大きく変化させる。
きっと、大谷翔平にはスキルに加え「人として」も備わっているからこそ、
チームメイトに「出て行かないで!」とまで言われているのだろう。
この「誰とやるか?」軸で高い評価を受ける人材は価値が高いのだが、
学歴や営業成績などと違って数値化、可視化するのが難しいし、
テストによってある程度の傾向はつかめたとしても、
実際にはそれなりに一緒に仕事をしてみないとわからない部分がある。
採用という文脈で言えば、本当の意味で良い採用ができたかどうかは
入社直後では判断が難しいという事になる。
だからこそ、多くの人材紹介会社はどうにかしてこれを見極めて、
企業様へご紹介したいと考えているわけだが、
どうしてもわかりやすい数字実績や大規模なプロジェクトの参画など
皆が納得しやすい材料を追ってしまい、そこに意識が引っ張られて
「この人はこういう方です」という判断をしてしまいがちである。
経験からくる思い込みのバイアスがある上、最近ではAIが見栄えの良い
応募書類を自動で作成してくれる時代であり、我々の解釈を挟む事によって
かえって候補者の本質から遠ざかってしまうケースも増えていくだろう。
冒頭の話の様に、例えば応募書類の改ざんや経歴詐称をさせて
企業にエントリーさせるなどが論外なのは言うまでもないが、
表面的に文字面を追っただけの見立てで人材を紹介し続ける事も、
人材紹介会社の存在意義や信頼を毀損する事につながり、
「もう、書類だけじゃなく全部AIでいいわ」となってしまうだろう。
候補者の「人として」の部分を見抜く力を養うだけでなく、
自分自身も人事や候補者から「誰とやるか?」軸で判断をされている事を忘れず、
中長期で活躍頂ける転職と採用にこだわり続けたいと思う。

コメント