ゆるい職場

最近「ホワイト企業」に勤務しているのに
会社を辞める若手社員が増えているらしい。
その背景には、
「今働いている会社がゆるすぎて、成長できないのではないか」
という将来への危機感があるようだ。
実際、弊社にキャリア相談にくる20代の若手にも、
「簡単な仕事しか任せてもらえない」
「ミスをしても、怒られない」といった
“ゆるい職場”という事を転職理由に挙げる方も一定数おられる。

私が、社会に出たのは20年も前のことだが、
当時の私は、日々の業務に追われ、上司に叱責され、
終電に乗れないなんて事も多々あった。
しかし、現在は、「働き方改革関連法案」「パワハラ防止法」などの
法律が施行され、上司が部下を叱っている光景は見られないし、
深夜まで働いている新人もほぼいない。
私の若い頃と比べると、かなりホワイトな環境になったと思う。
しかし、最近の若手社員の一部は、今の職場を“働きやすい環境”ではなく、
“ゆるい環境”だと捉えており、むしろ不安を感じているようだ。
企業側は労働時間を減らし、パワハラにも気をつけて
職場環境を改善する為尽力したが、
一方で、若手社員を“正しく指導する”ことを
放棄してきたことが招いた結果なのかもしれない。

今の40代以上のビジネスマンが若手社員だった頃、
仕事=苦行と捉える人も多かったかもしれない。
そんな環境下でも会社を辞めなかった理由は、
それらの仕事が自分の成長に繋がっていると
実感出来ていた瞬間があったからではないだろうか。
上司からたくさん叱られても、その分、多くのことを学び、
経験やスキルを身に着けることができていた。
しかし、今の若者の職場環境はパワハラと言われることに
恐れる上司から甘やかされ、「誰でもできるような仕事しか与えられない」
「ミスをしても誰も正してくれない」といった状態かもしれない。
何の経験もスキルも身につけられない環境であれば、
若手社員が転職したいと思う気持ちも分からないでもない。

ブラック企業からホワイト企業にするためには、
労働時間やパワハラを厳しく管理することは当然必要だ。
しかし、昨今の企業や上司は、“労働の質”までも
ゆるくしてしまっているのではないか。
若手社員も、働き続け、自身の成長が見込める企業なら、
簡単に辞めたりはしないだろう。むしろ、ゆるい職場を辞めるということは、
向上心が高いとも言える。簡単な仕事のみを与え、“労働の質”をゆるくすることは
上司にとっては楽なことかもしれない。
ただ、今後は上司自身も、若手社員を正しく育てるための技術を
身に着けることが必要なのではないかと思う。

若手社員が「ゆるい」と感じている反面、
そのしわ寄せは中堅やベテラン社員へと移っている。
社員に働き易い環境を与えようと努力した結果、様々なところで歪が発生している。
コロナ禍の影響もあり、リモートワークの導入も一気に進んだが、
最近は導入を取りやめて出社比率を高めている企業も多い。
残念ながら、どんな制度を導入しても社員全員が満足する制度を
作ることは難しいのだろう。時間、コスト、労力が必要になるが、
社員一人一人の仕事に対する考え方や認識を変え、
環境に影響されない「自走する社員」を育てていく事が
一番の近道なのではないだろうか。

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