先日、10数年位前に転職をご支援させて頂いたお客様から連絡があった。
久しぶりにお会いしたその方は、元気そうに近況を語ってくれたのだが、
彼の就業環境は、10数年前にご紹介した上場企業の管理職の立場からガラリと変わっていた。
その方は、既に60歳近いのだが、空白の10年の間に会社を早期退職し、
現在は若者向けのキャリアデザインの講師をしているとのことだ。
50代前半で、自分の人生を振り返る機会があり、
「このまま、目標もなく安定した環境で惰性で生きていていいのか」と不安に思ったとのことだった。
彼は、俗に言うミドルエイジクライシス“中年の危機”に陥ったのだ。
しかし、彼の素晴らしいところは、不安に陥ったあと一念発起し、
これまでのキャリアの棚卸を行い、自分が今後の人生で大切にしていきたい
「教える」という“新たな価値”に目を向けたことだ。
そして、彼は大学院で学び直し、現在の講師という職業に就いたのだ。
実際、会社員時代と比べると年収は少し下がったらしいが、
「会社勤めの頃よりも、毎日が充実して楽しいんだ」と明るく話してくれた。
話は変わるが、数年前に「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略」という本を読んだ。
この本はベストセラーにもなった本なので、知っている人も多いのではないかと思う。
本の中では、これまで典型的だった「教育⇒仕事⇒引退」という3ステージの考え方はほぼなくなり、
今後は仕事のステージが長期化。かつ、仕事の移行を数多く経験する、「マルチステージ」になると書かれていた。
確かに、転職サイトの求職者データをみても、数年前と比べると、格段に中高年の数が多くなっている。
ただ、中高年の転職・独立は、若い世代と比べてスムーズに行かないケースも耳にする。
決まったとしても、新しい職場に馴染めず1年足らずで辞めてしまい、その後新しい職が見つからない人もおられる。
私も「“生涯キャリアは変わり続ける必要がある”」と言うのは解らない訳ではないが、
中高年の転職・独立は、限られた優秀な人でないと難しいのではないか」と考えていた。
ただ、冒頭でお話しした方のお話を聞いて、その考えは間違っているのではと思い直した。
中高年の転職・独立であっても、その人自身が「今までの人生の中で大切にしてきた仕事観、
または、今後大切にしていきたい独自の価値観」をしっかり持ち、
先々どうなりたいかを自分の言葉にすることが出来れば、
たとえ違う業界・業種の仕事に就いたとしても、この方のように
前向きで楽しい人生が送れるのではないだろうか。
中高年の多くは「この歳で、新しい業界・業種に転職するのは難しいかも」と思っているかもしれない。
ただ、先ほども述べたようにその人自身が心の底から、
「~を成し遂げたい」「~という考えを大切にしたい」という想いがあれば、
どんな人でも転職・独立は可能なものではないかと思う。
また、もし新たな道で挫けそうになったとしても、その想いを思い出すことによって、
何度でも自らを奮い立たせることができるのではないかと思った。

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