歌詞の世界

話す・伝えるという仕事柄、多彩な表現方法を磨くために、
小説などから学ぶほかに「歌詞」からも学んでみようと思い、
歌詞を書き写しながら歌詞について考える時間をもってみた。

一般的に、日本人は歌詞を、海外の人たちはメロディを重視する傾向があるらしい。
私は学生時代に吹奏楽部だったせいか、歌詞よりも音色や使用楽器が気になるたちで、
むしろ歌っている裏に聞こえる音の方に意識が持っていかれることが多い。
正直、これまで歌詞はあまり頭に入ってこないタイプだった。
しかし、歌詞についてじっくり向き合ってみると、その表現の奥深さに驚いた。

歌詞が秀逸だと言われている米津玄師の表現を研究してみた。
実際に書き写してみて、まずスゴイ才能だなと感嘆した。
その曲では、歌詞全体が物語のような構成になっており、
比喩表現が散りばめられており、更には、あえて対比させた表現、シンボルを使った表現など、
短編よりも短い文章の中で、感情も含めて多彩な表現がされていた。
素晴らしい音楽は、歌詞の世界観がメロディと共に広がり、
想像力を更に豊かにさせてくれるものだと改めて思った。

また、歌詞ではないが、夏目漱石が「I Love You」を「月がきれいですね」と翻訳したという
有名な話があるが、これもまた繊細な表現で、当時の日本人の感性が伝わってくる表現だ。
言葉そのものよりも、ストレートには言えない気恥ずかしさや、でも静かで強い想いも感じる。

人の心を動かす歌を沢山生み出してきたと言われる、さだまさし氏は、
「自分のホスピタリティを言語化したものが歌詞」であり、
「心が伴わなければ、相手には薄っぺらい言葉に聞こえるだけ」だと雑誌のインタビューで答えていた。

難しい言葉や表現のテクニックのみを身に付けて米津玄師のように巧みに表現しても、
本当に伝えたいことはきっと伝わらない。
普段の会話や表現でも同じで、相手のことを想う真の気持ち(まごころ)が、
思わず口に出た言葉の方が確実に相手に伝わるだろう。
伝わる言葉は、相手を知り・想うことから生まれてくるということを心にとめておきたい。

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