血の通ったメッセージ

最近では、何か起こったら(政治、事件、事故、芸能ジャンル問わず)、
まずはネット上に「自分の意見」を書き込むという行為が日常化している。
SNS等の浸透によって、少数派の意見も注目されるなど、
ポジティブに発展した事もたくさんある。
でも、条件反射の様に繰り出される「Yes」「No」だったり、
自分と異なる意見への執拗な攻撃なども多く、
溢れる意見に際限なく触れていると気分が滅入る事もしばしば。
なんというか、血が通っていないメッセージが多い気がするのだ。

ビジネスにおいて「判断スピード」は極めて大事な要素とされる。
だから、ベースとして過去の自分の体験や経験上のサンプルから
素早く引っ張り出して、だいたい「これが回答だろう」と思われる意見を、
人より早くアウトプットできる能力はわりと重宝がられる。

しかし何でもそうだが、手段が目的化すると途端にチープになる。
ややこしいけど「早く引っ張り出すためのアウトプットのためのインプット」に
なってしまうと、恐らくほぼ思考はゼロに近いのではないか。
こうなると早々に限界が見えるし、顧客からの特別な信頼は得られないので、
やっぱり、その人なりの思考が入っていないアウトプット(血が通っていない)は
ほとんど価値がないという事なんだと思う。

一方で、相当に熟練度を高めることで、反射的でも付加価値の高い
アプトプットができる「達人」が存在するのも確か。
僕らはこれを目指すべきであって、これとさっきの「ゼロ思考人」には
似て非なる、とても大きな隔たりがある事を理解すべきである。

結局の所、答え合わせの様なやり取りを何万回繰り返しても前に進めない。
大学受験の時は「まずは赤本の答えから見るのがコツ」と塾で教わった。
しかし、それは答えが一つであり、そこにたどり着く事がゴールの世界での話。
前例やロールモデルが不在の中で、いかにして自分なりの答えを導き出すか。

些細な事でも、とりあえず答えを見てしまいたい衝動をぐっとガマンして、
まずは自分の頭で考える「思考習慣」を意図的に設ける事から始めたい。
それが血の通ったメッセージを生みだす唯一の方法であり、
未来の「達人」になるための着実な一歩になると信じている。

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