空き

去年やっとガラケーからスマホに変えた。
スマホにはカレンダー機能ももちろんあるので予定など入れていたのだが、
その日をクリックしないと予定を一覧できない仕組みになっていた。
あれはいつだっけ??これはいつまでにしなくちゃいけなかったんだっけ???などと、
予定を入れているにも関わらず、頭の中は整理できておらず、非常に忙しく感じた。
「忘れる」ということを安心してさせてもらえないのである。
日々忙しいので、一切を忘れて現在の物事に集中する必要があるが、
いつまでも脳のワーキングメモリが「忘れられない」予定たちに支配されており、
必要な容量が残っていなかった。そのため全体としての効率が落ちていたのである。

 ある日、某大型書店の前を通ると、手帳フェアが大々的に開催されていた。
親切な店員さんもおり、このタイプだとこの手帳があります、大きさはこれとこれで色は・・と
無数の手帳の中からアドバイスしてくれる。こんな手帳マスターがいたのか。
さらに、手帳というアナログな手段を選ぶ人がまだこれほど多いのかということにも驚いた。
さらに歩いてみると、見たことのないようなレイアウトのものもあり、楽しく検討できた。
その中で、文字の色が薄く主張のないもの、ページがめくりやすく動作の邪魔をしないもの、
ペンを持っても記入に支障のない幅、左側にカレンダーあって右側が空白のものを選んだ。
小さくて持ち歩きの邪魔にならないものにしようかと思ったが、それだと予定を記入するだけで
終わってしまうので、大きさは多少大きくてもしょうがないと妥協した。

さて、手帳で予定を管理し始めてみると、とても頭がクリーンになりスッキリした。
一日1回眺めて、その日にできる用事、未来の用事のために
前もってやっておかなければならない作業をすべて終えてしまい、
後は忘れるだけ。これで目の前のことにも集中できる。それに、あぁ忘れていた、ということもない。

そして最も重要なのが未来の組立である。
スマホのように予定を入れて受動的に「眺める」だけだと何も動かない。
あぁ予定があるんだった、というだけで終わらないのが手帳のすごいところだ。
紙面に「空き」があるのである。「空き」があると、予定のさらに深い部分を掘り下げたり、
気づいたことをメモしたり、予定という表面上の出来事の奥にまで至る。
スマホのメモ帳機能なんかもあるが、図を描いたり英語を交えたり色を変えたりするには
いちいち変換しなければならず実用的ではない。

「空き」があってそれを眺めることは、心の隅、自分が認識していない潜在意識や、
実は行動に移さなければいけない事に思いを巡らせて浮かび上がらせることに役立つ。
目の前に与えられる予定の羅列を眺めることは現状の枠組みにのみ依ることになるが、
何も与えることのない「空き」は、現在という時間や空間を超えたところにある
自分の未来を引き寄せることになる。

さて、やっとデフラグできたお正月明け、まだ空白になっている紙面を眺めてみよう。

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