バトンをつなぐ

今年も残すところ一週間ほどとなった。
そんな師走の忙しい最中、数年ぶりにインフルエンザになってしまい、
会社に迷惑をかけてしまった。幸いにもメンバーのフォローもあり、
お客様にご迷惑をかけずに済んでほっと胸を撫でおろしている。

自分がインフルエンザに感染して生じたメンバーの負荷というのは、
突発的なものなので、質を落とさずにフォローするのは難しいはず。
そう考えると、自社のことながら素晴らしいメンバーだなと感心する。
コンパクトな組織なので全員が私をよく分かっているのと
業界に専門特化しているので皆がそのカテゴリに精通しているというのも、
大きな要因だと思われるが、日ごろから「バトンをつなぐ」という意識が皆の中に
強く存在しているのも大きいのではないかと感じた。

病気やケガ、あるいは一生懸命やっていても起こるミス(ヒューマンエラー)は
どんな業界・組織においても避けられないものだろう。
思うに、ミスをゼロにすること以上に、二つ重要なことがあると私は感じている。

一つは「周囲が大枠として『ぶれない』フォローができる状態にある」こと。
当然、担当者以上に各案件の詳細を知る事は出来ていないと思うが、
この組織やチームにおける決まり事(コンピテンシー)を日ごろから可視化して、
それをしつこいくらいに共有する努力を行うことで、いざという時に迷うことがなく、
スピード感のある正確な対処が可能となる。

二つめは「その当事者(ミスした人)が自分の状況に甘えない事」だ。
これは実は結構大きい。悪意を持ってミスを連発する人などそういないと思うので
たいがいは「善意の中でのミス発生」という事になる。ましてやそれが病気などの場合は
「自分もつらい中で頑張っているんだ」というヒロイックな感覚を持ってしまうことも多く、
それを受けとってくれる「後工程」の存在をないがしろにしがちだ。
概して、事故は引継ぎを行う際に発生するものであり「きっと何とかしてくれるだろう」、
「俺の大変さも理解してくれているだろう」などの図々しい期待値と共に渡すバトンは、
多大な苦労を元に「受け手」が必死でつないでくれている事を自覚すべきである。

今年も発電所や鉄道、航空機などの重要施設において、実は原因が人為的なミスであると
結論づけられた事故も多かった。AIの普及でヒューマンエラーの数は減っていくと思うが、
便利で安全になる過程でますます「バトンをつなぐ」という意識は薄れていく可能性もある。
何かに判断を委ねたり、任せたりする事は決してマイナスな面だけではないが、
後工程の存在に神経が向けられていないと責任の所在が不明瞭なミスが多発し、
その根本解決はどんどん遠のいてしまう危険性もあると感じている。
病気だろうが、弱っていようが自らの持ち場を死守する意識を持つ事、これは
むしろシステム化されゆくAI時代だからこそ、忘れてはいけない仕事のポイントではないだろうか。
年明けは、そんな観点で箱根駅伝を応援するのも面白いかなと考えている。

皆様、本年もお世話になりました。
良いお年をお迎えください。

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