「~してください」は「下さい」か「ください」か

メールで文章を作成する際に、「~してください」を漢字で書くべきか、
平仮名にすべきか迷ったことはないだろうか?
どちらを使うのが適切なのかという、漢字能力検定協会の方の記事が目に止まった。

私たちは採用企業と転職希望者の間に立つ仕事であるため、
コミュニケーションが重要な仕事である。
メールや求人票など文字に起こして表現することも多いため、相手に伝わる印象を考え、
表題のような、漢字表記か平仮名表記かという迷いは常に生じる。

記事では、日本語には漢字と平仮名表記の使い分けのルールがあり、
大原則として、「意味の強い部分に漢字を使い、意味の弱い部分に平仮名を使う」
ということらしい。
ただし、この原則も絶対ではなく、個人や状況によって異なるということだった。
平仮名は、柔らかな印象を与えることができる。
一方で、多くなりすぎると読みにくく、
また柔らかな印象になってしまうからこそ厳密さに欠けるという点もある。

例えば、こんな感じだ。
/ばらの/はなびらに/あめの/しずくが/のっている
⇒全てが平仮名になってしまうと非常に読みにくい。
/薔薇の/花弁に/雨の/雫が/乗っている
⇒たしかに、漢字を拾って読むだけでも意味が通じる強さがある。
間違いではないが、文章の内容からもう少し柔らかい印象を与えたい。

常用外漢字はひらがなでというのが一般的なので
「薔薇」は「ばら」、「雫」は「しずく」とする。
花弁も「かべん」とは読んでほしくないので、
「花びら」とした方が良さそうということから、下記のようになる。
 /ばらの/花びらに/雨の/しずくが/乗っている

冒頭の「~してください」の場合は、どちらが正しいということなく、
結局一番重要なのは、読み手への配慮、ということだった。

漢字と平仮名の問題だけではなく、言葉が与える印象も重要だと思う。
例えば「こだわる」という語は、漢字だと「拘る」となる。
「拘束」や「拘留」など、「拘」という漢字は、手と句(鉤)が合わさった会意形声文字で、
物をひっかけとどめる意味がある。
「こだわる」の本来の意味も、つまらないことに気持ちがとらわれてそのことに必要以上に気をつかう、
拘泥(こうでい)するという意味で、良くない意味で使われる言葉でした。
(最近では肯定的な意味として国語辞典に載るようになっているとのこと。)

また、「業務をこなす」という表現は職務経歴書でもよく見かけるが、
この「こなす」という言葉が与える印象は、
ただ単に任されたことを対処した、というようにポジティブに感じない人もいるので、
言い換えた方が読み手を選ばず、よりポジティブな印象を与えることが出来ると思う。

言語はコミュニケーションツールであるからこそ、
一方的になりがちなメールやSNSのような環境であっても、
常に「読み手」がどう感じるかに配慮することが極めて重要だと思う。

日本語は、相手(読み手)に配慮し、言葉のすみずみにまで
気配りがなされた表現が求められるため、非常に難しい。
他方で、相手を考えたコミュニケーションを可能にする洗練された言語だと思う。
日本人であることの誇りを感じると同時に、国語力を磨く必要性を強く感じた。
スピード重視で感覚的にメールを作成してしまうのではなく、
読み手に配慮し、気になる言葉は、本来の意味や漢字の成り立ちを辞書で調べるなど、
言葉にこだわりを持つようにしたい。

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