風に揺らぐことの無い足場

この季節、変化の時期である。
寒さも緩み始め、生物は春に向かって新たなる芽を吹き出し
生命の息吹を感じさせる。

気候は春へと変わろうとする中、
不安定な大気の中で強烈な風が吹きさらし、春の嵐も頓に感じる。

弊社のオフィスの近くで、新しいマンションが建設中だが、
見上げると、もの凄い風の中で作業をしている現場の方が目についた。

おそらく地上から9階ぐらいの高さで足場作りをしている鳶職人。
服がバタバタしており、強烈な風に逆らいながら作業をされているのが感じ取れる。

強風の中で、自分の身長の3倍以上の長さの鉄の足場を持ち上げ、
それをどんどん上に伸ばす。

安全なところから見ていても、身震いしてしまうほどのおっかなさだ。
彼のてきぱきした素振りと強風が続く中でもどんどん上に伸びていく足場を見ながら、
「足元を固めること」というのがいかに大切かをふと考えるに至った。

きっと彼は自分でか、または彼の仲間がこれまで作ってきた、
「今、自らが立っている足場」に絶対の信頼を置いているからこそ、
このような天候の中でも臆すること無く、作業を続けることが出来るのだろう。
もしくはそこまで考えるまでもなく、当然の安心感を持って作業に臨んでいるのかもしれない。

いずれにせよ、「今、自らが立っている足場」が不安定であったり、
信頼に足るものでは無かったら、さらに足場を上に作っていくことは出来ないだろう。

春のこの陽気と同様にでは無いが、市場にも強烈な上昇気流が吹いており、
日経平均株価は12,000円を突破し、リーマンショック以前の水準を回復し
世間では、待ち望んでいた本格的な景気回復期が来たかと、つかの間の春を謳歌している。

そんな中で景気の足元を固めている、足場を固めているのは一体誰なのだろうか。
信頼感はいったい誰が作っているのか。

正直に言って、私はこれには即答出来ない。
ましてや、信頼感を持ってこの状態を受け止めることは出来ない。

この嵐ともいえる風の中で、作業を続ける彼のように、
この景況感とは言え、足元に信頼が置けないのだ。

そんなことを吹き付ける砂に目を細めながら考えた。

我々は転職サービスを提供する側として、
自分自身が地に足をつきながら、転職者が新たなる活躍の場、新しいステージに挑戦するとき、
果たして信頼に値する確固たる足場を提供できているかを、
日々問うて行きたいと思う。

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