メモの目的

メーカーの営業責任者の方で、業務遂行能力が高く、仕事の達人として有名な知人がいる。

その方は、気になることがあると必ずメモを取る、いわゆる「メモ魔」だ。
その方ほどではないが、私もメモを取るのが好きな方で、
手帳は年中書き込みで埋まっているし、机の周りはいつもポストイットが貼ってある。

それにもかかわらず、私はその方のようには仕事がすいすいとはかどらず困っている。
元々の能力の違いもあるだろうが、他の理由は何だろうと思って、
ご本人にお尋ねしてみると、以下のような答えが返ってきた。

「私も最初は、メモを取ることそのものに夢中だった時期がありました。
ですが、大事なのはメモを取ること自体ではなくて、メモに書いた業務を実行することだと気づいたんです。
数分で終わる小さい用事を、昔は面倒臭がって後回しにしていましたが、今は、その場で済ますようにしています。
後回しにして時間が経つと、思い出す労力が必要だったり、面倒臭くなったり、やり忘れたりするので、
結局その場でやった方が楽なんですよね。
だから、メモ魔の評判からは意外と思われるかもしれませんが、
その場で済むことはその場で済ませますから、メモを取らないことも実は多いんですよ。」

言われてみてはっと気が付いた。
私自身のことを振り返ると、たしかに、後回しにしたことは、時間がたつと面倒臭くなることも一度や二度ではない。
メモを取ることで自己満足してしまっており、メモを取る目的を忘れてしまっていたのかもしれない。

その方は、歩きながら職場でごみやちりを拾い、ご自身の机まわりがいつもぴかぴかなことでも有名なのだが、
上記のコメントとも通じると思った。

気づく度に汚れをきれいにするから、その方の机はきれいなのだろう。
たしかに汚れがたまってから掃除となると、労力も要るし、なかなかやる気も起きない。

その場その場でなすべきことをしていくその方の仕事ぶりが、
さわやかで誠実な印象を与え、顧客から信頼を得る一因となっているのだろう。

私も、職場でちりや小さいごみを見つけたら、その場で拾うところから始めてみた。
なかなか慣れないが、やってみると気持ちがいいし、お客様に満足していただくには、
このような小さなことをきちんとできているかが大事なのだと再認識した。
凡事徹底というが、一事が万事なのだと改めて思った。

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